5疾病6事業とは?第8次医療計画の変更点や覚え方のゴロを徹底解説
地域医療の現場や医療従事者の間で必ず押さえておくべき重要キーワードが「5疾病6事業」です。都道府県が策定する地域医療のマスタープラン「医療計画」において、国が重点的に医療連携体制を構築するよう義務付けている柱を指します。
2024年度からスタートした第8次医療計画では、これまでの「5疾病5事業」に新たな事業が加わり、2026年現在の地域包括ケアシステムや感染症対策の基盤として本格稼働しています。本稿では、医療法改正の経緯から具体的な疾患・事業の内訳、国家試験対策にも直結する覚え方のゴロまで、医療の全体像を分かりやすく紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:5疾病6事業は、厚生労働省の医療計画に基づき各都道府県が重点整備する医療体制の基本項目。
- 要点2:第8次医療計画(2024〜2029年度)より「新興感染症等の感染拡大時における医療」が追加され6事業へ拡充。
- 要点3:看護師国家試験や医療経営でも頻出であり、在宅医療や地域包括ケアとの連携強化が加速している。
【超基本】5疾病6事業とは?厚生労働省が定める医療計画の骨格
日本は国民皆保険制度のもとで高度な医療を提供していますが、限られた医療資源を効率的かつ効果的に配分するため、厚生労働省は医療法に基づき「医療計画」の策定を都道府県に求めています。
その医療計画の中核を成すのが、国民の生命・健康に極めて大きな影響を与える代表的な疾患と、地域で切れ目なく提供されるべき医療機能です。これらを具体的にリストアップし、予防から急性期、回復期、慢性期、在宅医療に至るまでの連携体制を構築する枠組みが5疾病6事業と呼ばれます。
医療従事者だけでなく、自治体の保健医療担当者、医療機関の経営企画部門にとっても、自施設の病床機能や地域連携の方向性を定めるうえで不可欠な指標です。
5疾病5事業との違いは?「新興感染症」追加に至った医療法改正の経緯
従来の枠組みであった「5疾病5事業」と現在の「5疾病6事業」の決定的な違いは、「新興感染症等の感染拡大時における医療」が事業項目に新設された点にあります。
この変更の契機となったのは、2020年以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大です。平時運用の病床と有事の感染症病床の切り替え、重症患者の搬送調整、初動時の宿泊療養・自宅療養体制の構築などにおいて、従来の医療計画では想定しきれなかった多くの課題が浮き彫りとなりました。
これを受け、国は2021年の医療法改正で新興感染症対策を医療計画の必須記載事項に位置づけました。準備期間を経て、2024年度(令和6年度)から始まった第8次医療計画において正式に「第6の事業」として組み込まれ、パンデミック等の有事にも揺るがない医療提供体制の整備が制度化されました。
【一覧】対象となる「5つの疾病」と「6つの事業」の内訳と役割
現在指定されている具体的な疾病と事業の内訳は以下の通りです。いずれも患者数が極めて多い、あるいは緊急性や専門性が高く地域偏在が許されない分野で構成されています。
【5つの疾病】
- がん:日本の死因第1位。拠点病院を中心とした集学的治療、緩和ケア、相談支援体制の充実。
- 脳卒中:急性期(t-PA治療や血管内治療)から回復期リハビリ、再発予防へのシームレスな移行。
- 急性心筋梗塞:迅速な救急搬送とカテーテル治療(PCI)体制の確保、心臓リハビリテーションの普及。
- 糖尿病:重症化予防(人工透析や失明、足切断の防止)および地域のかかりつけ医と専門医の連携。
- 精神疾患:従来の入院中心から地域生活中心への移行、うつ病や認知症、児童・思春期のメンタルヘルス支援。
【6つの事業】
- 救急医療:初期・二次・三次救急の役割分担と、逼迫時における受入体制の円滑化。
- 災害医療:災害拠点病院やDMAT(災害派遣医療チーム)の配備、BCP(業務継続計画)の策定。
- へき地医療:離島や山間部における医師派遣、遠隔診療(オンライン診療)を活用した医療格差の是正。
- 周産期医療:ハイリスク分娩に対応する総合・地域周産期母子医療センターと地域の産科クリニックの連携。
- 小児医療:小児救急体制の確保、慢性疾患を抱える子どもへの成育医療支援。
- 新興感染症等の感染拡大時における医療(新規):病床確保協定の締結、発熱外来の運用、PPE(個人防護具)の備蓄管理。
【2024〜2026年最新】第8次医療計画における改定ポイントと在宅医療の位置づけ
2024年度の改定ポイントは、新興感染症の追加にとどまりません。超高齢社会がピークへ向かう2025年・2040年を見据え、在宅医療の充実がより強く打ち出されています。
「5疾病6事業」という呼称のため見落とされがちですが、医療計画の骨子には「5疾病・6事業及び在宅医療」と併記されることが通例です。病院完結型から地域完結型への転換が進むなか、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーション、地域の薬局が一体となった「看取りまで含めた在宅医療提供体制」の数値目標設定が各自治体で厳格化されています。
また、医師の働き方改革への対応や、医療DX(マイナ保険証・電子処方箋・電子カルテ情報共有)の推進も、各事業のネットワーク維持において重要な評価軸となっています。
【国試対策】看護師国家試験でも頻出!5疾病6事業の覚え方・鉄板ゴロ合わせ
看護師国家試験や保健師国家試験、医療情報技師試験などでは、5疾病や6事業の組み合わせを問う問題が毎年のように出題されます。確実に暗記するための定番語呂合わせを紹介します。
【5疾病の覚え方・ゴロ】
「脳にとーしんじ、がんせき」
(脳:脳卒中 / とー:糖尿病 / しん:急性心筋梗塞 / がん:がん / せき:精神疾患)
【6事業の覚え方・ゴロ】
「旧車の壁、周りに小さく感染」
(旧:救急医療 / 車[災]:災害医療 / 壁[へき]:へき地医療 / 周:周産期医療 / 小さく[小児]:小児医療 / 感染:新興感染症等の感染拡大時における医療)
過去問では「精神疾患が追加されたのはいつか(2013年・第6次計画)」や「新興感染症が追加されたのは第何次計画か(第8次計画)」といった歴史的経緯を問う設問も多いため、変遷の流れと一緒にインプットしておくのが得策です。
【5疾病6事業とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:精神疾患はいつから5疾病に追加されたのですか?
A1:2013年度(平成25年度)からスタートした第6次医療計画で追加されました。それまでは「4疾病5事業(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)」でしたが、患者数の急増や社会問題化を背景に「精神疾患」が加えられ、5疾病となりました。
Q2:在宅医療はなぜ「事業」の中にカウントされていないのですか?
A2:在宅医療は個別の専門事業という枠組みを超え、すべての疾病・事業を地域で支える「基盤的インフラ」として位置づけられているためです。制度上は「5疾病・6事業及び在宅医療」として独立した重点項目として扱われます。
Q3:第8次医療計画の期間は何年間ですか?
A3:2024年度(令和6年度)から2029年度(令和11年度)までの6年間です。ただし、新興感染症等の感染拡大時における医療については、感染症予防計画との整合性を保つため3年ごとに必要に応じた見直しが行われます。
まとめ:地域医療構想とともに進化する日本の医療体制
「5疾病6事業」は、単なる行政用語や暗記項目のリストではありません。急性期から回復期、在宅まで、必要な患者に必要なタイミングで医療が届く仕組みを地域全体で作るための設計図です。
超高齢化に伴う医療ニーズの変化や、将来起こりうる新たな感染症クライシスに対応するためにも、5疾病6事業を基軸とした地域医療ネットワークの進化は今後も続いていきます。医療に携わるすべての人にとって、その背景と最新の動向を正しく理解しておく価値は極めて高いと言えます。 (出典: 5 疾病 6 事業 と は(Yahoo!ニュース))